※成人向※寝付きが悪いエレンをいじりたおすジャンの話
(挿入無し/左右お好みでどうぞ)
まったく今日はついてない一日だった。
護衛役を押し付けられてエレンに付き添い内地の兵団支部へと出向かされた挙句、結局先方の用件が一日では終わらず、急遽あてがわれた宿舎の一室に泊まることとなった。
せめて個別の部屋かと淡い期待を抱いたが、奴の護衛という立場上、考えるまでもなく相部屋だった。狭い部屋にはシングルのベッドがふたつ、小さなチェストを挟んで横並びで置かれている。他にはポールハンガーと燭台とランプ。最低限「荷物を置いて寝る」用途で使う以外は皆無のなんとも簡素な部屋だ。
ここまでの移動と任務で疲弊していたこともあり、すぐさま寝られるかと思いきやそうもいかなかった。
隣のベッドで就寝していたエレンがガバリと飛び起きた気配につられて目が覚めた。寝ぼけた横目で見遣ると、エレンは何処ともつかない空間を凝視しながらシーツを握りしめて荒い呼吸を繰り返していた。
「どうかしたのか」
「……いや、何も……すまん」
「? ああ……」
なんでもないとは言ったものの、エレンはその後もなかなか寝付かなかった。こうも狭い部屋では、隣でモゾモゾと何度も寝返りを打つ音も、長く吐き出す呼気の音も耳障りなほどに響く。
何年も集団生活していながら今さら寝床が変わると寝付けないなんてことはないだろう。とはいえ、体感としてはかれこれ小一時間は経過していると思うくらい随分ものあいだ一向に落ち着く気配がない。
無視を決め込めばいいだけの事なのだが、ひとたび意識を向けるとどうにも気が散ってしまう。明日も朝早くから予定が立て込んでいるというのに、このままではつられて寝不足になりかねない。
「おい、エレン」
いいかげん夜目も効いてきた頃、遂にはしびれを切らし、俺の安眠を妨害する張本人に向かって苛立ちまぎれに声をかけた。背を向けるように横たわっていたエレンが肩の端からわずかに顔を覗かせてこっちに目を向ける。
「……何だ」
「とっとと寝ろ」
エレンは「それが出来たら苦労しねぇ」と言わんばかりの倦んだ溜め息をついた。半身を倒して仰向けになり天井とも虚空ともつかぬ場所をボンヤリと見つめたまま、にわかに口を開く。
「……どうやって眠ってたのか、思い出せねぇ」
「ハァ?」
何を言っているんだこいつは。いきもの初心者か。思わず体を起こして聞き返してしまった。
「オイオイお前、そんなの犬や猫にだって出来るぞ」
「あぁ……」
「動物さえ出来ることが出来ねぇとは、いよいよもってキてるなぁオイ」
「……そうだな」
「なんなら添い寝でもするか? エレンちゃんよォ」
「…………」
からかいのつもりで投げかけた軽口に「ガキ扱いすんな」とムキにでもなるかと思いきや、特に反応は無かった。ただ枕に頭を預けながら無言で俺をジッと見遣る。無駄に大きい目玉で見据えられて、決まりの悪さが這いよってくる。そう感じた矢先に、エレンがのそりと体をずらして自分の横をあけた。
「なら頼む」
「ハァ!? 馬ッ鹿! 冗談に決まってんだろ!!」
「なんでもいい」
「あぁ? いいわけあるか」
どう考えてもこのベッドは野郎ふたりで使うには窮屈だ。しかもよりによってお前と共寝なんざごめんこうむるわ。ふざけんじゃねぇ。と、言いたいことは山ほどあったが、俺が拒否したことで頼みの綱が切れたのか、エレンは目を伏せて嘆息した。頭を重たげに枕に沈めて表情を見せないままボソリと呟く。
「……なんでもいいから……もう、頭ん中、カラッポになんねぇかなって……」
「……バーカ、元からカラッポみてぇなもんだろうが」
何をたわけたことをぬかしやがる。一丁前に悩みの種を頭いっぱい詰め込んでますとでも言うような言いぐさが鼻についたので、目の前に横たわる頭をワシ掴んでかき乱してやった。枕に押し付けた分だけ「な、」とか「う…」とかくぐもった声が漏れたが、これもまたロクに反抗もせずにされるがままで、いつもの本調子とは思えないしおらしい態度だった。
どうやら相当参っているのは事実のようだ。まぁ、現状においてこいつに課せられた難儀な案件と負担の数々を鑑みれば、夢見が悪いのも寝覚めが最悪なのも無理はない……と思わなくもない。とはいえ、素直に宥めすかして寝かしつけてやるのも癪に障る。俺は護衛役を任されてはいるがベビーシッターではない。
どうしたもんかと思案を巡らしているうちにふと、底意地の悪いことを思いつき、黒髪をまぜかえしていた手を離した。
「……あるぜ」
「え?」
「頭カラッポで嫌でも寝れる方法が、ひとつある」
グシャグシャに乱れて顔にかかった髪を払いのけながらエレンが頭上の俺を見上げる。覆い被さるように枕の横に手を突いて屈み込み更に続ける。
「知りたいってんなら、教えてやらねぇこともねぇ」
「…………」
別にもったいぶるほどのモノでもなかったのだが、己の溜飲を下げるために敢えてハッタリをかけた。エレンは動向を伺っている俺をまたしてもジッと見返す。寝不足で疲れきった頭ではロクに考えがまとまらなかったのか、それとも何か思うところがあるのか定かではないが、束の間の沈黙が流れた。今日は時間の経過がやけに遅い──と思った頃合いにようやっとエレンが口を開いた。
「じゃあ、教えてくれ」
傍らにある俺の腕にかしげた頭を擦り寄せてくる仕草が縋っているように見えたのは……きっと偶然か錯覚なのかもしれない。しかし、日頃のいけ好かない態度から今回限りだと割り切るには事足りる素振りのように思えた。
まったく俺という奴はつくづく気がイイ人間だ。
大げさに溜め息をついて見せながら、さっさと終わらせてしまおうと上掛けを剥ぎ取った。当のエレンはこれから眠るんじゃなかったのかと顔に疑問符を浮かべつつ外気の肌寒さに少し身じろぐ。
「ジャン……?」
「ほら、とっととやるぞ」
つとめて何でもないようなそぶりで膝の間に割って入り、なんの兆しも見せていないこいつの股ぐらに手を這わせてみせる。エレンは急所を掴まれてギクリと目を瞠り、少し間をおいて意図を察したのかそのまま呆れたようにハァ……と息を吐いて脱力した。
「……嫌でもって……これかよ……」
「これしかねぇだろ、男なら。抜いときゃ寝れる」
「そうか?」
「うるせぇな、いいから出すもん出しとけ」
「ん……」
くだらない応酬を続けている間、乱雑に揉み込んだり撫でさすったりと刺激を与えていたがそれでも効いたのか、中心部がにわかに芯を持ち始める。いや、勃つのかよ。抵抗も無しかよ。なんなんだ。目の前にいる奴が誰なのか理解しているのかこいつは。
「お前、いつから抜いてないんだ?」
「う……さぁ………」
「オイオイ……」
溜めっぱなしも体に毒だ。適度に処理するくらい誰だってやるだろ。もしかして自慰の方法もロクに知らないのかこいつは。いや流石にそりゃないだろ。疑念を打ち消しつつも同じブツを持ってるとは思えない生き物を目の当たりにしているような気持ちになり、なんだか妙な興がノってきてしまった。
エレンは俺の手から与えられる刺激で徐々に高まる性感の波をやりすごそうとギュッと目を閉じ、唇を引き結んで耐えている。我慢くらべなんざしていたら余計に長引くだけなんだが……こちらも別にこいつの気色悪い喘ぎ声を聞きたいわけじゃない。しかし、こうも頑とした態度を取られると否が応でも嬌声を引きずり出してやりたくもなる。
どういうわけか触れること自体に拒絶の意を示す気はないらしい。いいかげん布越しの接触がまどろっこしくなり、下衣の境目から手を突っ込んで邪魔な衣服をずり下げた。わずかな湿り気を帯びた熱芯を直に掴むと、流石に驚いたのか反射的に身体が跳ねた。
「な……ッ!」
「おー、コッチは正直じゃねぇか」
外面的には反応の度合いがよくわからなかったが、しっかりと刺激を拾ってはいたようだ。先端から滲み出ている先走りがそれを証明していた。粘液のぬめりを利用して竿全体に塗り込めるように指を動かす。
しかし、いかんせん正面から他人のブツを握るのと自己処理とでは指の向きが逆でどうにも勘所が掴みづらい。それに刺激に耐えるように眉根を寄せるこいつの顔を見下ろし続けるのも、何だかよくないモノがじわじわと腹の底から込み上げて目の毒な気がした。
「おい、やりづれえから向き変えるぞ」
「え? ……うわっ」
そう告げて急き立てる手を一旦離した。突然の解放に弛緩した身体をぐるりと反転させて四つん這いの格好を取らせる。片手で自重を支えながら、腿の付け根からもう片方の手を差し込んで改めて手淫を再開する。日頃の己の処理方法を思い出して勘を取り戻しながら追い立てていく。
「…ハッ……これ、いや、だ……」
「あ? なんでだよ」
切羽詰まった声で制止を促してくる。腰回りがヒクリと波打ち、かぶりを振って髪を揺らす様子から、感じ入ってはいるようだ。だのに何がダメだというのか。
「……ぅ、…シーツが、よごれる……ッ」
「ハァァ?」
この期に及んで言うことか。と、本気で呆れて一瞬手が止まった。何を言い出すかと思えば借り物のシーツを自分の精液で汚すのは許しがたいとかぬかす。本当に何を言っているんだこいつは。
「ごちゃごちゃ言うなほら」
「ま……やめッ──ジャン!」
せっかく昇り詰めていてあと少しだったろうにどうしても寝具を汚すことが気がかりなのか、股間をまさぐる俺の右腕に自らの手を伸ばし、爪を立てて戒めようとする。背後の俺に向けて首を反らし、精一杯の抗議の目で「やめろ」と訴えるように睨みあげてくる。
チッと舌打ちしてならばともう片方の手を腰に回して上体を引き上げる。体勢を崩したエレンがそのまま腕の中におさまり、図らずしも背後から密着して抱きかかえる形になった。
すっかり腹につくほど勃ちあがった肉棒をいつも自分のブツを処理する時のように弄る。指で輪をつくって竿を往復し、充血した亀頭を親指でつつき、鈴口から漏れ出る先走りを裏スジに塗りつけ、カリ首のフチを弾く。陰嚢を掬いあげて陰茎ごと揉みこみ精子のめぐりを促しもしてやる。
限界が近いのかエレンの呼吸がだんだん浅く速くなっていく。局部を扱く手は止めることなく追い立てる。腕に力がうまく入らず自重を支えきれなくなったエレンが次第に俺の胸に背を預ける体勢になっていく。頭の位置が近いため、細い毛質の黒髪が揺れるたびに顎のあたりをかすめてくる。汗ばんだにおいが鼻孔をくすぐる。どんなだらしのない顔をしているのかまでは見えないが、時折鼻にかかった呻き声が至近距離で聞こえる。
「くっ……ジャ、…もう……」
「さっさとイケよエレン」
「ッ!!………ぅあ、ア……ッッ!!」
頭を仰け反らせながらやっと吐精を迎える。ビクビクと腰が跳ねるに合わせてわずかにベッドがきしむ。
噴出した精液は、本人の懸念を守ってシーツを汚さずには済んだが、代わりに自身の腹から胸、そして顎にまで渡り点々と降りかかっているようだった。
達したあともヒクつく性器から残滓を絞り出すようにじっくり扱いてやると、色の濃い粘液がとろとろと糸を引きながら流れ出る。エレンはボンヤリとした様子でヘソの周りに溜まっていくそれを眺めながら、荒げた息を整えるよう浅く呼吸を繰り返し、おとなしく逐情の余韻に身をゆだねていた。
「ハァァ……やっっっと終わったか……」
「…………ジャン、………」
「あ? 何だって?」
かすかに発声した音はまったく言葉になっておらず全然聞き取れなかった。顔を覗き込むといつもの半分も開いていない気だるい目で何かを言いたげにするので、口元に耳を寄せて聞き返した。
「当たってる……」
「なッ!! うるせぇ! 俺に構うな!!」
「んっ、あぁ!」
不覚にもつられて誤作動を起こし始めている己の愚息がエレンの腰に触れていたせいでまんまと気づかれた。きまりの悪さを誤魔化す勢いで、達した直後のペニスを強めに握りしめた。敏感になっているであろう部分を重点的に狙って責め立てる。もう早く済ませてしまいたい一心だった。
「ハッ……ジャン、も、ういい……って、」
「俺もだよ。早いとこ降参しろ」
「う、ぁ、───ッッ!!」
二度目の吐精は割とすんなりだった。間髪入れず無理矢理高められる性感に身悶えしながら声もなく絶頂したようだ。
やがて十分な酸素を吸い込み、呼吸がいくらか落ち着いた頃になると、エレンは今度こそまぶたの重みに抗うことなくそのまま目を閉じて意識を手放した。くったりと弛緩した身体の重みが一気に腕に来る。とりあえず当初の目標は達成した。しかし──
「……どうすんだよこれ………」
腕の中で寝息をたてている体液まみれのエレンと、ベトベトになった己の手と、まだ収まりのついていない自分のソレと、どこから後始末をしたものか──と、しばしのあいだ途方にくれた。
<了>