Trugbild

蝕む毒 / リヴァイとエレン

*吸血鬼パロ


 リヴァイは寝台に腰掛けさせたエレンの首筋に鋭利な牙をめり込ませ、薄く瑞々しい肌を突き破る。毎度のこととはいえ、皮膚を貫かれる痛みにエレンはわずかな呻き声を漏らした。

 食事の一環として自身の血を分け与えることは承諾したものの、歯先から流し込まれる「痛み止め」がエレンは苦手だった。身体中が火照ったように熱くなり、抑えがたいほどの淫欲に苛まれるからである。エレンは手足の先に力をこめて堪えようとしたが、魂胆を見透かしたリヴァイが唇の隙間からフッと吐息を吹きかけた瞬間にあられもない声をあげて寝台に崩れ落ちた。
 追従してベッドに乗り上げたリヴァイは、エレンの身動きを封じるように覆い被さりながら、突き立てた牙をゆっくりと引き抜く。エレンの身体が弛緩したのも束の間、あけた穴に唇と舌先を当てなおして血液が流れ出るように促す。吸い上げる度にちゅう、と鳴る卑猥な音もエレンの耳殻から羞恥を掻き立てる。致死量にならないよう加減しながら少しずつ摂取するのがリヴァイなりの情けだったが、エレンにとってはその分責め苦が長引くことになるので「やるなら一気にやってくれ」と思うばかりだった。

 エレンの官能を呼び起こす成分がリヴァイの唾液から体内へ染み渡っていく。血の巡らない頭が尚更に判断能力をぐずぐずと溶かす。失った血液を補うためか、それとも催淫の作用が効いているのか、心臓がせわしなく拍動を繰り返してやまない。浅ましい欲求が己の内から這いよっては自制を侵していく。
 こんなの痛いほうがマシだ。皮膚が裂けて多少血を抜かれるくらいで済んでくれたほうが余程いい。とエレンは思う。リヴァイからしてみれば「後始末」も含めて世話の甲斐があるそうだが、エレンにはその醍醐味とやらがよくわからなかった。

 ひと通り飲み終えた頃合いで、リヴァイはゆっくりとエレンの首筋から唇を離した。貫いた穴から滲む血までも、名残りを惜しむように小さなリップ音を立てて吸い上げる。幾度となく同じ行為を繰り返しているというのに、いつまで経っても物慣れすることなくこわばる身体を宥めるように撫でた。

 エレンは体内にうごめく衝動をどうにかやり過ごそうと、肩を上下させながら荒い呼吸を繰りかえす。目をきつく閉じ、眉根を寄せ、胸元を抑えながら不足している酸素を取り込もうと喘ぐ──その悩ましげな顔が、リヴァイの情欲を煽るとも知らずに。

「悦さそうだな」
「な、にが……ですか……」

 リヴァイは舐めるような視線でエレンの身体を辿り、中心で張り詰めた昂りを無言で示唆してから、またエレンのほうへと向き直る。エレンはバツの悪さを誤魔化すために膝を擦り合わせようとしたが、覆い被さるリヴァイの脇腹に当たって阻まれた。

 なけなしの抵抗を見せるエレンの表情を覗き込むように身を伸ばす。リヴァイはこのまま己の瞳を介してエレンを思い通りに操ることも出来たが、濡れた瞳でこちらを見遣るエレンを前にその力を使う必要はないだろうと判断した。
 先ほど血を吸い取られたばかりにも関わらず色を失うことなく紅潮する頬に、冷え切った手の甲を当てがいお互いの熱を分かち合う。燻りが収まる気配のない様子を悠然と眺めながらリヴァイが声をかけた。

「苦しいか」
「……もう……いい、でしょう……」

 エレンがにわかに顔を上げて視線を交わしたのを皮切りに、どちらからともなく唇を重ねた。エレンは口の中に流れ込んでくる己の血液と、酩酊を齎らす甘露の混ざり合った味に一瞬だけ顔をしかめたが、やがて抗うのを諦めて耽溺に身を預けた。


<了>

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